目次
1.はじめに
2.変形性関節症って何?
3.へバーデン結節の症状
a)痛み・はれ
b)変形
c)水ぶくれ(ミューカスシスト・粘液嚢腫)
d)爪の変形
4.へバーデン結節と女性ホルモン
5.へバーデン結節になった時に気を付けること
a)痛みをとる
b)手指のケアをする
c)女性ホルモンの働きを強める
d)肩こりを治す
e)自律神経を整える
6.おわりに
1.はじめに
へバーデン結節という病気をご存知でしょうか?
たぶん、40歳台以上の女性はご存知の方も多い病気ですが、男性はほとんど知らないというくらい女性に多い病気です。
このへバーデン結節ですが、変形性関節症の一種で、指の第1関節(爪に一番近い関節)が変形し曲がってしまい、腫れたり傷んだりする病気です。
第1関節の背側の中央の、伸筋腱付着部をはさんで2つのコブ(結節)ができるのが特徴です。
一般にこの病気は、40歳以上の女性に多く、指をよく使う職業の人がなりやすいと言われています。9割以上が女性の患者さんで、女性特有とも言っていい病気です。この病気が40歳代以上の女性に多いのは、女性ホルモンの変化が大きく関わっているからだと考えられています。
当院にいらっしゃるお客様の中にも、へバーデン結節の方がいらっしゃいますが、全員が女性の方です。
2.変形性関節症って何?
へバーデン結節のヘバーデンとは、この病気を最初に報告したイギリスの医師の名前です。変形性関節症の中で、指の第1関節に発生する変形性関節症を特に「ヘバーデン結節」と言います。同じような変化が指の第2関節でおこると「ブシャール結節」と呼びます。
変形性関節症とは、関節にある軟骨がすり減ったり、骨が増殖し、痛みや変形をおこす病気です。
変形性関節症は、体のあらゆる部位に発生しますが、手の変形性関節症は、圧倒的に数が多く、特に日本人に多い病気です。70歳以上の方は、ほぼ全員発生していたとする研究もあるそうです。
手の変形性関節症は、関節リウマチなどと違い、5~10年くらいで自然に痛みが治まることが多いとされています。しかし、患者としては「自然に痛みが治まる」と言われても、そうそう長く待ってはいられません。
そこで整形外科を受診するわけですが、へバーデン結節は原因もわからず治療法も確立されていないため、受診したところによっては、「放っておけば治る」、「年だから仕方がない」、「治療法はない」と言われてしまうことも多いようです。
医師にとっては重症度も高くなく、それほど関心のある病気ではないのかもしれませんが、症状が落ち着くまでの期間は誰にもわかりませんし、痛みは治まっても変形はそのまま残るなど、患者さんにとっては悩みの大きい病気です。
3.へバーデン結節の症状
へバーデン結節は、指の第1関節で骨と骨の間の軟骨がすり減って、骨が変形することで起こる症状です。
この病気になると、指が曲がったまま伸びなくなったり、手を握る際にこわばったような感じがしたり、痛みがある指の爪の付け根に水ぶくれのようなものができているなどの症状がでます。
ヘバーデン結節の主な症状は、次のようなものです。
a)痛み・はれ
最も多い症状です。
最初は、手を使ったときに強い痛みが出ますが、症状が悪化すると、何もしていない時でも痛みが続くこともあります。
b)変形
軟骨のすり減りや、骨のでっぱり(骨棘)により、関節部分が膨らんだり傾いたりします。関節を支える手綱の役割をする靭帯もゆるむため、物をつまむ時など、関節がグラグラして力が入りにくくなります。
また、人目にふれやすいところなので、変形がコンプレックスになることもあります。
c)水ぶくれ(ミューカスシスト・粘液嚢腫)
関節のそばに水ぶくれのような物が出来ることがあります。これをミューカスシストといいます。
関節は、関節包という膜に覆われその中は水分で満たされています。普段は、その水分があるおかげで関節をスムーズに動かすことができるのですが、変形性質関節症で骨棘が出来ると関節液の出し入れがうまくいかなくなり、その結果ミューカスシストが発生すると考えられています。
d)爪の変形
爪が凸凹になったり、線が入ったりします。
爪の下部には爪半月をいう白い部分がありますが、その根元に爪をつくる「爪母」という部分があります。その部分は関節に非常に近いため、変形性関節症の影響をうけて爪の変形が発生します。
へバーデン結節の最初の症状が関節の痛みや変形ではなく、爪の変形である場合もあり注意が必要です。
4.へバーデン結節と女性ホルモン
へバーデン結節は、更年期以降の女性に多く発生します。これには女性ホルモンの変化が大きく関わっていると考えられています。
更年期になると女性ホルモンの中でもエストロゲンが減少します。
エストロゲンには、軟骨の強度をアップしたり滑らかな状態に保つ作用や、滑膜の鎮痛効果、筋力アップなどの作用があります。
これらの作用で関節の健康が保たれているのですが、エストロゲンが減少すると、軟骨がすり減るのが早まったり、軟骨や骨がもろくなる、関節の炎症がおさまりにくくなるなどの障害が起きるため、関節の痛みやはれを引き起こす変形性関節症になりやすいのではと言われています
5.へバーデン結節になった時に気を付けること
へバーデン結節の治療法は、残念ながら今のところ確立されていません。
しかし、現時点でも症状の緩和を図ることは可能です。その方法についてまとめてみます。
a)痛みをとる
慢性の痛みの治療では、痛みをとることが最優先です。痛みが治まってくれば、患部を楽に動かすことができるようになって、血液の循環や神経の機能が回復します。また、へバーデン結節では、痛みが取れれば日常生活にあまり不便を感じなくなり生活の質が向上します。
痛みをとる場合、整形外科なら神経ブロック注射や患部にステロイドの注射などが行われますが、鍼灸の場合、患部を直接刺激したり、経絡やツボを応用して痛みをとります。痛みに対しての鍼灸の有効性は、いろいろな疾患で証明されています。
b)手指のケアをする
へバーデン結節で整形外科を受診すると、手指を動かさないようにテーピングなどで固定されることがあります。
テーピングももちろん有効ですが、日ごろから手指の負担を軽くし、ケアすることが効果的です。
たとえば、料理をするときに、素材から調理せずあらかじめ切ってあるカット野菜や冷凍野菜などを使ったり、スーパーに行き重い買い物袋を下げて帰る代わりに宅配サービスを使ったりと、この際ですから、手指に負担がかからない家事の工夫をしましょう。
また、ハンドクリームなどを使って、指のマッサージをすることも有効です。ハンドクリーム中には女性ホルモンを配合しているものもあります。そうでなくても、自分に合ったハンドクリームでマッサージをすれば、血行を改善し痛みを和らげる効果があるばかりでなく、リラックス効果で精神を安定させることもできます。
c)女性ホルモンの働きを強める
へバーデン結節は、女性ホルモン・エストロゲンの影響が大きいため、「女性ホルモンを飲めばいいんじゃないか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ひどい更年期症状に対してはホルモン補充療法などが行われますが、手の痛みに対してホルモン補充療法を行うことは一般的ではありません。
そこで、へバーデン結節の人は、エストロゲンと似た働きをする大豆イソフラボンを積極的に摂取して、へバーデン結節だけでなく、更年期にかかわる不調を軽減することをおすすめします。
大豆イソフラボンは、納豆、豆腐、豆乳、おからなどの大豆食品に含まれ、納豆なら1パック、豆腐なら3分の2丁、豆乳なら1杯が一日の摂取量の目安です。
また、「エクオール」というサプリメントも有効です。
納豆や豆乳などの大豆食品を食べると、そこに含まれるイソフラボンが腸内細菌で代謝されエクオールに変化します。エクオールは女性ホルモンと非常に似た構造なので、関節を健康に保つ女性ホルモンと同様の効果が期待できます。
d)肩こりを治す
私たちは、神経を通して身体の痛みを感じています。へバーデン結節の指の痛みは、腕を伝わって首から脳に信号が送られていますが、その時、首や肩にコリがあると、頸椎部が圧迫されて血流が悪くなり痛みが強くなります。実際に痛みを感じているへバーデン結節の患者さんを拝見すると、ほとんどの方に強い肩こりが見られます。
そして、この強い肩こりをほぐすと、ほとんどの患者さんで指先の痛みが軽減することが分かっています。
肩こりを治すのは鍼灸やマッサージの得意技ですが、日ごろから肩を回したりして、肩まわりの血流を改善しておくと、へバーデン結節の痛みも楽になってきます。
e)自律神経を整える
自律神経失調症のブログ記事でも書きましたが、身体につよい緊張があったり、精神的なストレスがかかると、自律神経のうちの活動モードである「交感神経が優位」になって、抹消の血管が収縮し血流が悪化します。すると手指の血行も悪くなり、痛みをより強く感じやすくなってしまいます。
ほとんどの現代人は、朝起きたときから夜寝るときまでほとんど活動状態にあるため、交感神経が働きっぱなしの人が少なくありません。この状態は、へバーデン結節にもよくありません。
そこで、「今ちょっと焦っているかも」とか、「疲れたな、ずいぶん仕事をしたな」と感じたら、ちょっと仕事の手を休めて体を伸ばす、お茶を飲む、深呼吸をするなどの、自分をリラックスさせる方法をあらかじめ考えておいて実行してみてください。そうすることで交感神経を鎮め、痛みを和らげることができます。
本格的に精神を安定させたいなら、瞑想やその西洋版ともいえるマインドフルネスなどもおすすめです。また、自律訓練法や自己催眠などを利用して自律神経を整えることもできます。
6.おわりに
へバーデン結節に悩む方は、女性を中心に300万人以上いるといわれています。
この病気は、ご本人にとっては痛みや変形がありとてもつらい病気ですが、似た症状の関節リウマチに比べ、全身の関節に広がったり症状が急激に悪化し障害を残したりはしないため、整形外科では軽視されがちな病気です。
痛みや変形のつらさに加え、医師から「放っておいても治る」と言われたら、医療から見放されたと感じて二重に苦しむことになります。
当院にいらっしゃるお客様の中にも、へバーデン結節の方がいると先ほど書きましたが、「へバーデン結節を治してください」といったいらっしゃった方はこれまでいません。それは、この病気は治らないものだと思って「我慢し、あきらめている」からだと感じます。
しかし、へバーデン結節の痛みを「我慢する」必要はありません。むしろ、我慢は症状を悪化させます。
なるべく早く痛みをとって、身体を楽にしてあげましょう。変形を治すのは外科的な治療が必要ですが、少なくとも痛みからは解放されれば、生活の質を大きく向上させることができます。
痛みをとることに関しては、鍼灸やマッサージは昔から得意分野です。首や肩のマッサージにくわえて、離れたところのツボに針をすることでへバーデン結節の痛みを緩和することができます。
また、マインドフルネスなどの精神を安定させる方法を身に付ければ、さらに痛みを軽減することができます。
へバーデン結節でお悩みの方は、一度、当院でご相談いただければと思います。
鍼灸、マッサージ、カウンセリングを組み合わせた一人一人にあわせた方法でへバーデン結節の痛みに対応いたします。
この記事や当院の施術が、少しでもへバーデン結節でお悩みの患者様のお役に立てれば幸いです。
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