目次
1.はじめに
2.貝原益軒と『養生訓』
3.『養生訓』の教え その1-自分のからだは自分で守る-
4.養生訓の教え その2-「楽」の大切さ
5.まとめ-生活を楽しんで健康になる-
1.はじめに
今、「免疫力」が話題になっています。
免疫力が何を指示しているのか、その解釈は人により様々ですが、要は、「普段の生活を改善して、病気にならない体になりたい」という気持ちを「免疫力」という言葉で言っているのであれば、それは、「養生」という言葉で言い換えることができると思います。
現代のような医療がない時代、人々は今以上に病気になることを恐れました。
出版が盛んになった江戸時代には、様々な「養生書」が出版されました。今ならば、『○○○で病気にならない体を作る』というようなタイトルがつく種類の本です。
2.貝原益軒と『養生訓』
なかでも有名なのが貝原益軒が著した『養生訓』です。
『養生訓』は、江戸時代を通して繰り返し出版されたロングセラ―であり、当時の人の「養生観」や「健康観」に多くの影響を与えました。
『養生訓』の著者、貝原益軒(篤信)は筑前、今の福岡県の黒田家の下級武士の家に生まれました。生前、一冊だけ本を発行した本が『養生訓』です。そして益軒は、発行の翌年に84歳の人生の幕を閉じました。当時としては異例の長命でした。
『養生訓』を読むと、貝原益軒は生まれつき虚弱であったといいます。また、益軒が38歳の時に当時17歳の女性と結婚しましたが、その女性も病弱でした。
しかし、二人がともに病弱でありながら養生した結果、夫人が62年間の生涯を閉じたのは、貝原益軒がその生涯を閉じる前の年にあたる83歳の時でした。今の言葉でいえば、21歳差の「歳の差婚」でありながら、40数年ともに結婚生活を送ることができたのです。晩年も夫婦で福岡から京都など物見遊山の旅に出かけるなど、仲睦まじく長生きしたと伝えられています。
そのような生活の中で益軒は、養生は病後の手当てだけではなくて病気の予防にも役に立つことや、養生をすれば体質が生まれつき弱い人でも元気で生きていくことができること、また、養生をして長生きすることは幸福の根本であることを広く知らせたいと願い、83歳で『養生訓』を執筆し発行しました。
3.『養生訓』の教え その1-自分のからだは自分で守る-
『養生訓』から、今でも学べることはたくさんあります。中でも、ここでは二つのことを取り上げたいと思います。
その一つは、過剰な医療を避け、「自分のからだは自分で守る」ということです。
益軒は、他者に健康の維持を頼ることは間違っていると考えていました。あくまで健康の維持は「主体的」でなければならないのです。
自身が健康維持の主体であることを放棄すると、二つの危険があります。一つは、生活が放埓(ほうらつ)になる危険です。益軒は、健康であるためには、食欲、色欲、嗜眠欲などの欲望を抑えることが必要だと考えました。しかし、自分で健康を維持しようとする意欲がなくて、「病気になっても、医者がどうにかしてくれるだろう」という他人任せの健康維持になれば、欲望を抑えようとする意識が薄くなり、結果、暴飲や暴食、生活の乱れがひどくなります。
また、自分の体なのに、医者や専門家といわれる人の言うままの医療や健康管理を受け入れるのも危険です。一人一人、多様な生き方を受け入れるのが今の社会ですが、できれば自分らしく生きたいと思うのは益軒も同じでした。近年、インフォームドコンセントやQOLの考え方が出てきたのも、そうした考えに基づいています。医療は、(患者の意思にかかわらず)「治す」ことを目的としますが、養生はどちらかといえば「癒す」を目的とします。「気持ちよく」健康に過ごしたい、と思ったら養生に力を入れる方がよいということです。
4.養生訓の教え その2-「楽」の大切さ
もう一つは、「身心両面の楽が養生の道へつながる」という考え方を益軒はしています。養生に、心身両面の「楽」という要素を入れたことが益軒の独創的なところです。
ここで、伝統的な漢方医学での病気の原因についての考えを見ておきます。漢方医学では病気の原因(病因)を大きく三つに分類してきました。
厚さや寒さなどの外界の自然現象が病気の原因となる「外因」、怒りや悲しみなどの精神的動揺が病気の原因となる「内因」、疲労や食べ過ぎなどの外因とも内因とも言い難いものを「不内外因」といい、この三つです。
したがって、病気にならないようにするには、衣食住や仕事などの環境を整えるとともに、「七情」と言われる「喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」の感情をうまくコントロールすることが大切になります。そこまでは、それまでも言われていたことですが、益軒はそれらに「楽」をプラスして、養生では「楽」が何より大切だと強調しました。
『養生訓』には、「身に道を行ひ、ひがことなくして善を楽しむ、身に病なくして、快く楽しむ、命長くして、久しく楽しむ」という文があります。訳せば、「道を行い、善を積むことを楽しむ。病にかかることの無い健康な生活を快く楽しむ。長寿を楽しむ。」という意味になります。合わせて「三楽」といいます。
「楽」というのは、「楽しい」、「快適だ」というのとはちょっと違います。
益軒の言っている「楽」は、自分で有意義だと感じる行動をした結果生じる「内的な充実感」です。
益軒は、食欲を抑え、運動することなど奨励しますが、それらの健康維持の行動を苦行のように感じれば、それ自体がストレスになり「楽」に反します。逆に、それらに意味が見いだせれば、充実感イコール「楽」を感じることができます。充実した生活が送れば、おのずからそこに健康がついてくる、と考えたのです。
これを、今どきの言い方でいえば、「マインドセット」の変更ということもできるでしょう。今まで辛い、面倒だと思っていたことに意義を見出し、それを楽しめるようになれば行動が変わります。まずは、「小食は気持ちがいいな」、「老いも悪くないな」といってみてください。言葉が変われば信念も変わります。信念が変われば行動が変わります。それがマインドセットの変更です。
5.まとめ-生活を楽しんで健康になる-
自分の生活に意義を見出し、主体的に生きることはいつの時代でも大切なことです。人生には大変なこともありますが、小さな喜びにも出会います。「今日はよく寝られた」とか、「今日はいい天気だった」とか、小さな喜びを積極的を見出す努力をしてみてください。
小食を楽しむ、運動を楽しむ、人との出会いを楽しむ、健康に感謝する、老いを受け入れる、こういったことに喜びを見つけ、自分の健康は自分で作るのだという考え方ができれば、結果として(免疫力が高まって)健康で長生きができます。そう『養生訓』は伝えているのだと思います。
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