目次
あなたのお子さん、本当に怠けですか?
起立性調節障害の症状
起立性調節障害について~当院でできること~
1.あなたのお子さん、本当に怠けですか?
小・中学生や高校生のお子さんをお持ちで、こんな悩みをお持ちの方はいませんか?
たとえば、
夜遅くまで、Youtubeを見たりゲームをしている。
毎朝、なかなか起きてくれない。
遅刻が多く、成績も下がってきた。
朝食を食べず、何となく顔色も悪い
こんなお子さんには、「何怠けているの、ちゃんとしなさい」とか、「ちゃんと食べなくちゃダメよ」とか、思わずキツイひとことを投げつけてしまいそうですね。
でも一見、怠けているように見えるお子さんですが、それって、もしかしたら怠けではなくて「起立性調節障害」かもしれません。お子さん自身も困っているかもしれないのです。
起立性調節障害とは?
起立性調節障害とは、自律神経系の異常によって、血圧などの調節ができなくなる「体」の病気です。原因はよくわかっていません。
自律神経については、以前の「自律神経失調症」で詳しく書いたのでそちらを読んでほしいのですが、もう一度かんたんに説明します。
私達の体の臓器、肺や胃や心臓は、車のアクセルに当たる交感神経とブレーキに当たる副交感神経からなる「自律神経」という神経によって、常に最適な状態になるよう調整されています。たとえば 、私が走れば、「交感神経」が働いて心臓や肺をフル稼働させ、寝れば、「副交感神経」が働いて消化のために胃や腸が動き出すという具合です。
人の身体は、寝ている状態から起き上がると、血液は重力によって一時的に下半身に降りていってしまい血圧も下がってしまいます。しかし、そのままではまずいので、自律神経系の一つである交感神経が興奮して下半身の血管を収縮させ、心臓へ戻る血液量を増やし、血圧を維持するようになっています。
しかし、自律神経(この場合は交感神経です)の機能が低下した結果、このメカニズムが働かず、血圧が低下し脳血流が減少するため多彩な症状が表れるのが起立性調節障害です。立ちくらみがずっと続いているような感じですね。
ブレーキとアクセルの話でいえば、自律神経失調症はブレーキがきかず車が暴走している状態、起立性調節障害はずっとブレーキがかかりっぱなしで車が動かない状態といえば、わかりやすいかもしれません。
起立性調節障害は、小学校高学年から多くなり、中学生から一気に増えます。中学生の10%、10人に1人はこの病気だといわれています。中学・高校生に最も多いですが、20歳代になっても改善されない例もあります。また、男子よりも女子に多い病気です。
起立性調節障害になると、遅刻が増え、登校しても午前中はボーッとしていることが多いため、勉強が分からなくなり成績が下がることが多いです。
また、朝きちんと起きられないため、遅刻を繰り返して不登校に移行することも多く、こういった場合に、教員に起立性調節障害の知識がない場合、怠けと見做され叱責されているうちに、だんだんと学校から足が遠のき、やがて本格的な不登校になるケースもあります。
さらに、周りの生徒から特別な目で見られて、孤独感を味わったり、孤立感からやがて自分は周りから排除されているのではないかと感じるケースも出てきます。
2.起立性調節障害の特徴
起立性調節障害をもった架空の中学生の一日を書いてみました。
朝目覚めると体調が悪く、起きるのがつらい。せっかく用意してくれた朝ごはんも、全然食べたいと思えない。少し吐き気もする。
ようやく家を出て学校に行っても、また遅刻をして先生に怒られた。授業に出ても、立ちくらみや動悸・頭痛などがひどくて、授業の途中で保健室に行ってしまった。養護の先生と話すのは楽しいけれど、他の生徒から何か言われそうで教室に戻るのはおっくうだ。
後になると少し体調がよくなる。毎日ではないけれど元気な時もある。特に夜になると元気になってくる。夜11時を過ぎてもなかなか寝付けないので、ベッドの中でスマホをいじっているうちに1時を過ぎてしまった。また明日の朝も、今日みたいな気持ちで目を覚ますと思うと憂鬱になってますます寝付けない。何度も時計を見てしまう。
大人でも、こんな一日を過ごすのはつらいですよね。
起立性調節障害の症状には、次のようなものがあります。お子さんといっしょにチェックしてみてください。
1 立ちくらみ、めまいを起こしやすい。
2 立っていると気持ちが悪くなる。
3 入浴時、あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる。
4 少し動くと動悸、息切れがする。
5 朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い。
6 顔色が青白い
7 食欲不振
8 腹痛がある。
9 倦怠感がある、あるいは疲れやすい。
10 頭痛がある。
11 乗り物に酔いやすい
以上の項目をチェックして、3つ以上あてはまる(特に1~5が大切です)場合は起立性障害の疑いがあります。その場合、お医者様に相談することをおすすめします。
小児科、循環器内科、脳神経内科などを受診することも可能ですが、かかりつけの小児科の先生がいれば、高校生でも見ていただけるのでそちらで相談するのが一番良いと思います。
鉄欠乏性貧血や、甲状腺機能以上など他の病気で似たような症状が現れる場合もあります。そういった意味でも受診をおすすめします。
起立性調節障害で気を付けたいこと
1.お子さんを怒らないでください
起立性調節障害は体の病気ですが、心理的ストレスで悪化することが分かっています。また、起立性調節障害になりやすい子供は、小さいころから、手のかからない「良い子」であることが多く、ストレスをため込む傾向があります。怒ることは、症状をさらに悪化させます。
2.学校と連携をとってください
起立性調節障害だとわかったら、まず担任の先生に相談してください。しかし、残念ながら、起立性調節証のことを知らない教員はまだまだたくさんいます。もし担任の理解が得られない場合は、養護教諭(保健室の先生)に相談してみるのもよいと思います。養護教諭はたいていこの病気のことを知っていますし、こうした生徒の対応にも慣れています。不登校になりそうなときには、教頭先生や養護教諭に相談することで配慮してもらえることもあります。また、医師に診断書を書いてもらることも有効です。けっしてあきらめないでください。
3.日常生活でできることがあります
塩分・水分を多めにとることで血圧を上げることができます。塩は少し多めに、水は1日に1.5~2.0リットルとるようにしましょう。
急に立ち上がらず、頭をさげてゆっくりと立ち上がることも大切です。頭に血を送るように動作を工夫しましょう。
朝日を浴びることもよいことです。子供が起き上がってこなくても、朝は必ずカーテンを開け日の光を入れるようにしてください。ホルモンバランスを整え、体内時計を正常にしましょう。夜は11時前に寝る習慣をつけることも大切です。
4.起立性調節障害は治ります
お子さんが起立性調節障害になると、「今日は学校にいけるのか」、「体調不良がこの先ずっと続くのではないか」と毎日心配になると思います。このように心配されている方々には、まずは「安心してください。的確に治療することができれば、起立性調節障害は治る病気です。朝元気に起きて学校に行けるようになりますよ」とお伝えしたいと思います。
思春期は、体と心が子供から大人へ切り替わる不安定な時期です。起立性調節障害でなくてもさまざまな問題が起こります。しかし、思春期の問題は、起立性調節障害の問題をふくめ、年齢が上がり大人になれば自然に解消されることがほとんどです。ですから親御さんも、どっしりかまえてお子さんの成長を見守っていただきたいと思います。
3.起立性調節障害について~当院でできること~
1.カウンセリングと教育相談が受けられます
中学校2,3年生でお子さんが起立性調節障害で学校に行けなくなった場合、一番問題となるのは進路です。この病気の場合、子供にストレスをかけないという観点からいえば、お子さんの希望を最優先にすることが最も良いことだといわれています。
しかし、親御さんには親御さんの望みや葛藤があるでしょうし、また、子供にも「何が自分の本当の希望なのかわからない」という迷いの中にいるケースも多いことと思います。
そういった場合、第3者であるカウンセラーと話すことが有効です。お子さんだけ、親御さんだけ、あるいは親子同時面接も可能です。
また、高校生の場合、欠席や遅刻があまり長く続くと単位が取れず、進級・卒業ができないというケースが出てきます。そうならないように一緒にプランを考えたり、万が一そうなったときに次にどうするかを一緒に考えることもできます。
2.鍼灸・マッサージとカウンセリングによる体質・性格改善がはかれます
起立性調節障害の原因はよくわかっていません。しかし、年齢とともに症状が軽くなり、だいたい大学生になるころ、遅くても20歳代前半には治ることから、発育の遅れがこの病気に関係しているといわれています。この発育の遅れには、身体面だけでなく、精神面の遅れも含まれます。
持って生まれた体質や性格は人それぞれです。誰もがもともと頑健で、ストレスにも強ければよいのですが、なかなかそうはいかないものです。
先ほど、「起立性調節障害になりやすい子供は、小さいころから、手のかからない「良い子」であることが多く、ストレスをため込む傾向があります。」と書きました。言い換えればこうした子供は、「繊細で、身体や心のどこかに弱さを持っている」といっていいと思います。それを、カウンセリングと鍼灸、マッサージで改善していくことができます。
もともとの持った性格傾向は簡単に変わりません。つまり、もともと内向的な性格を、急に外向的にするのは無理です。
しかし、認知の傾向を変えることは可能です。よく言われることですが、半分水が入ったコップを見て、「もう半分しかない」と考えるか、「まだ半分ある」と考えるか。その考え方・物の見方で、その人の幸福度に大きな差が出るという実験があります。なるべくそういったプラスの認知ができるようにカウンセリングを行います。
また、鍼灸やマッサージを受けることで、全身の状態が改善し、全身に上手く血流を巡らせることができます。特に脳への血流が改善することで、自律神経の働きを正常に戻すことができます。
終わりに
最後までお読みいただきありがとうございました。
起立性調節障害は、体質によるところが大きい病気です。もともとの心身の繊細さが、思春期に、めまい、動悸、失神、疲れやすさ、腹痛、吐き気、嘔吐、頭痛、胸痛、食欲不振、朝起きられないなどの、全身の不調という形であらわれます。
この病気になると、しばしば、怠け、不登校、神経症などと誤解されることがあり、本人にとってはつらい症状であることに加え、周囲の誤解や無理解に深く傷つき悩むことになります。
もしこういうお子さんをお持ちの親御さんが、この文章を読みんだことがきっかけで、受診されることようなことがあれば本当に幸いです。
この病気はその存在に早く気づいて受診すれば、多くの場合治療は容易だといわれています。しかし、なかなか改善しないようなとき、また、学校生活に不安等があればお気楽にご相談ください。お手伝いさせていただきます。
起立性調節障害のことならご相談ください。
高崎さと鍼灸院は、鍼灸とカウンセリングを併用することで、体と心に寄り添う施術を行なっています。ただ施術するだけではなく、東洋医学の豊富な知見を活かし、即効性よりも、患者様の「自然治癒力」の回復にこだわった治療をご提案します。色んな治療をしたが改善しなかった方、あまり薬に頼りたくないとお考えの方は、高崎さと鍼灸院までお気軽にご相談ください。
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