
授業中、トイレが我慢できない高校生がいることをご存知ですか?
先日、小学校の先生とこういう生徒の話をしていたら、その方はこんなふうに言っていました。
「小学生ならわかるけど、高校生にもなって「授業中トイレに行かせてくれ」なんてありえないですよ。そんなの当然我慢させるべきだと私は思います。」
これが、過敏性腸症候群(IBS)という病気を知らない人の普通の理解なのかもしれないですね。でも実際は、トイレが気になって授業に集中できなったり、テストが受けられないという生徒は想像以上にたくさんいます。
もちろん、大人の人にも過敏性腸症候群の人はたくさんいます。通勤や通学にも支障をきたすため、本人には大変つらい病気です。今回は過敏性腸症候群についてお話します。
目次
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群の4つのタイプ
過敏性腸症候群の原因
脳腸相関
過敏性腸症候群の治し方
腸内環境の改善
1.過敏性腸症候群の症状
次の項目を見てください。
お腹に不快感があり、下痢と便秘を繰り返している
緊張や不安になると、下痢になりやすい
食後などに、急にトイレに行きたくなる
腹痛で病院に行ったが、異常はないと言われた
電車の中などトイレがないと不安になる
誰でも一度くらいは、こんな経験していると思います。しかし、こんな症状が繰り返し起こっているなら、それは「過敏性腸症候群」かもしれません。
過敏性腸症候群とは、お腹の調子が悪く、腹痛と、便秘または下痢などの便通異常が数カ月以上続く状態で、内科的な所見のないときに考えられる病気になります。比較的若い年齢の人に多い病気です。
この病気は、症状が進むと、「吐き気」、「頭痛」、「疲労感」、「抑うつ」、「不安」、「集中力低下」などの症状がともなうことが多く、日常生活にも支障をきたすことも少なくありません。慢性化する前にきちんと治療をすることをおすすめします。
2.過敏性腸症候群の4つのタイプ
過敏性腸症候群の主な症状は、下腹部痛、腹部膨満、ガス、便秘、下痢などです。
過敏性腸症候群は、便通とガスの状態により、「便秘型」「下痢型」「混合型」「ガス型」の4つに分類されます。
便秘型……ストレスを感じると便秘がひどくなる
下痢型……緊張するとお腹が痛くなったり下痢になる
混合型……下痢と便秘を交互に繰り返す。
ガス型……ガスが腸内にたまる、頻繁にガス(おなら)が出る
これらのタイプのいずれにも、「吐き気」、「頭痛」、「疲労感」、「抑うつ」、「不安」、「集中力低下」などの精神症状がともなうことがあります。
3.過敏性腸症候群の原因
残念ながら過敏性腸症候群の原因ははっきりしてません。ですが、腸内細菌や食べ物、ストレスなどにより腸の異常運動や知覚過敏がおこり、次のような順で症状が発症、悪化すると考えられています。
ストレスや不安、あるいは不摂生は食事、生活、服薬やアルコールの摂取などの刺激 がきっかけとなりお腹の調子をくずす
腸の動きが悪くなり便通異常などの症状が出てくる
便通異常が繰り返されると、腸が知覚過敏の状態になる。普通なら不快に感じないような腸内ガスや動きを不快に感じてしまい、症状がさらに悪化する
「いつお腹が痛くなるか」という不安感が増し、さらに腸の調子を崩す
このサイクルには、性格が大きく関係しています。繊細でストレスに弱い性格の人ほどこのサイクルの影響を強く受けると考えられます。
4.脳腸相関
脳から腸へ、「今から消化のために働きない」と命令が出ることはよく知っていると思います。しかし、逆もあることはあまり知られていません。じつは、脳と腸は自律神経やホルモンなどの情報伝達系を介して、互いに影響を及ぼし合っているのです。

脳から腸への情報伝達と、腸から脳への情報伝達は一方的ではなく、双方向的に影響を及ぼしています。この様な「腸」と「脳」の関係を「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼んでいます。
まず、体や心にストレスがかかります。すると、脳の中の視床下部や下垂体という所からホルモンが出て、さまざまな生体反応を引き起こします。
そして、これらの反応の中には、例えば、感染症における発熱のように、必要だが不快な反応もあるわけです。下痢や便秘などの消化管運動異常や、腹部の不快感などの内臓知覚異常などがそれです。
さらにストレスを受けた腸管は、腸内細菌叢(「腸内フローラ」ともいいます)にも変化を起こし、腸内の病原性が高まります。ストレスは、俗にいう悪玉菌を増やし腸内環境を悪化させます(逆に腸内フローラが良くなる、つまり善玉菌が増えるとストレスに強くなります)。
腸の状態が悪くなり下痢や便秘を起こすと、腸からその情報が脳に伝わり、本来のストレスをさらに増大させてしまいます。
過敏性腸症候群は、このような「脳腸相関」による悪循環により、症状が悪化してしまう病気だと考えられています。
5.過敏性腸症候群の治し方
過敏性腸症候群を治す方法には次のようなものが考えられます。
規則正しい生活を送るなど、生活習慣の改善によりストレスを軽減する
食物繊維や発酵食品を積極的に摂り、刺激物やお酒を控え、腸内環境を整える
体調の維持やストレス軽減のために、生活に運動を取り入れる。
マインドフルネスや自律訓練法で、意識的にリラックス状態をつくる
カウンセリングを受け、問題を解消する
鍼灸やマッサージ治療で、ストレスを軽減し、腸の働きを正常に戻す
不安やうつ状態を解消する薬、腸の機能を改善する薬、整腸剤などを服薬する
当院では、4,5,6を組み合わせて治療に取り組んでいます。以下に治療についての考え方をまとめておきます。
過敏性腸症候群というは、もともと性格的に繊細あるいは神経質で、なかなか気持ちが切り替えられずストレスを溜めやすい人が、進級や進学、就職や転勤などをきっかけに発症することが多い病気です。
そのため、下痢や便秘などの症状が強い人は「過敏性腸症候群」と診断されますが、不安や抑うつ感情などの精神症状が強い人は、「パニック障害」や「不安障害」と診断されることもあります。
治療は、過敏性腸症候群と診断されても、パニック障害と診断されても、基本的には同じです。
まず、鍼灸やマッサージで体の緊張をほぐしながら、胃腸の調子を整えます。症状が取れてくれば、体が本来持つ自然治癒力が働きだします。そして、ある程度リラックスできたところで、カウンセリングを行い問題解決の方法を一緒に考えていきます。
それと並行して、マインドフルネスや自律訓練法のやり方を覚えます。家でも実践することで、ストレスに負けない、ストレスを受け流せるようなメンタルを持てるようにしていきます。
当院での過敏性腸症候群の治療は、だいたいこういった流れになります。
6.腸内環境の改善

私たちが、脳で幸せを感じるもとになる物質のひとつが「セロトニン」です。実は、このセロトニンは腸管で作られています。
セロトニンが脳内で正常に作用すると、人は幸せを実感し健康ですごすことができ、逆に、セロトニンが不足すると、怒りやすくキレやすくなるといわれています。このセロトニンの生成に腸内フローラが関与することが明らかになってきました。
腸内フローラを正常に保ち、善玉菌を増加させるために重要なものが食物繊維と発酵食品です。
食物繊維を多く含む食材には、野菜、芋類、キノコ類、海藻類、豆類などがありますが、食事の洋風化とともにこういった野菜の摂取が減少しています。現在の日本人は、平均で一日に5〜10gの食物繊維が不足していると考えられています。このような食品をたくさん食べるように工夫するとともに、不足分をサプリメントで補うことも有効です。
また、納豆、みそ、漬け物、ヨーグルトなどの発酵食品も腸内フローラを正常に保つ働きがあります。発酵食品の製造には、酵母などのいわゆる発酵菌の働きが必要です。このような発酵菌が、腸内フローラを善玉菌に変化させることと考えられています。積極的にこのような食品をとることをおすすめします。また、ポリフェノールにより腸内細菌の有用菌が増加することも分かってきました。
これらの食品をとることで、腸内をよい循環に変えることができれば過敏性腸症候群の症状を改善できます。まずは、自分自身の健康のため、過敏性腸症候群の改善のために、今日からできる腸内環境の改善に取り組んでみてください。
ご一読ありがとうございました。
過敏性腸症候群(IBS)ことならご相談ください。
高崎さと鍼灸院は、鍼灸とカウンセリングを併用することで、体と心に寄り添う施術を行なっています。ただ施術するだけではなく、東洋医学の豊富な知見を活かし、即効性よりも、患者様の「自然治癒力」の回復にこだわった治療をご提案します。色んな治療をしたが改善しなかった方、あまり薬に頼りたくないとお考えの方は、高崎さと鍼灸院までお気軽にご相談ください。
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