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執筆者の写真高崎さと鍼灸院

「花粉症のセルフケア」



目次

(1)はじめに

(2)花粉症は昔からあったのか?

(2)まずは体質改善をはかろう

(4)家庭で簡単ツボ療法

(5)おわりに



(1)はじめに


2月になりましたね。2月も中旬を過ぎると、花粉症の人にはつらい季節がやっていきます。例年と比べ、今年(2021年)は花粉の飛散量が多いだろうと予測されています。

毎年この季節になると、天気予報で花粉の飛散予測を確認したり、薬を飲んだり、マスクをしたりと、花粉症の人にとっては鬱陶しい日々が続きますよね。


年々、花粉症の治療薬は改良されてきて、よく効くようになってきています。半面、薬には副作用もつきものです。そこで、誰しも、「できれば薬に頼らず症状を抑えたい」と考えると思います。ここでは、そんな時に役に立つ東洋医学の知恵をお伝えしたいと思います。



(2)花粉症は昔からあったのか?


花粉症は、日本人の3人に1人がかかる、今や日本人にとっての「国民病」といっても過言ではありません。しかし、花粉症がテレビや雑誌で取り上げられるようになったのは、それほど以前からのことではありません。

昔から、「アレルギー性鼻炎」や、もっと古くは「鼻カタル」という病名はありましたが、「花粉症」という言葉をよく耳にするようになったのは1980年代になってからだと思います(「スギ花粉症」という病気自体は、1964年に斎藤洋三という耳鼻科医によってはじめて報告されました)。

 もちろん、昔の鍼灸や漢方の本を見ても、「花粉症」という名称の病気は載っていません。それでは、花粉症は、化学物質や大気汚染が進んだ現代社会特有の病気なのでしょうか?


江戸時代にかかれた鍼灸の本に、『鍼灸重宝記』*1というものがあります。その本の中の「鼻病」という項目に、「鼻淵(びえん)」という病気が記されています。鼻淵になると、「濁ったりさらさらとした鼻汁が止まらなくなる」という症状を呈し、その原因は、「風熱」が脳に災いして起こると記されています。どうでしょう、これなどは、花粉症に症状が似ているような気がしないでしょうか?


 また、顔色が白く、さらさらとした鼻汁(清涕)を流し、においが分からなくなるのは「肺虚」で、鼻詰まりがして青洟(あおばな)を流すのは「熱邪」、さらさらした鼻汁を流すのは「寒邪」だという記載もあります。

もちろん、これらの記載が花粉症(アレルギー性鼻炎)のものだとは言えません。

しかし、鼻汁の状態に注目し治験例を残しているのは、それなりにそういった患者(鼻水が止まらないが通常の風邪とは異なる患者)が多かったからでしょう。その中に、アレルギー性鼻炎や花粉症の患者がいたと考えても、そうおかしくないような気がします。


また、治療に使うツボを見る限り、今の花粉症の治療でも有効に使えるツボが選ばれていると感じます(ちなみに、鼻病全体には、「百会、上星、肺兪、風門」のツボが、さらさらの鼻汁(清涕)には、「人中、上星、風府または風門」のツボがあげられています)。

また、当時の江戸ではたびたび大火が起こり、そのたびに多くの家々が焼失しました。その復興のため、大量の杉が今の埼玉県飯能市や日高町あたりから運ばれてきました。これを西川材といいます。当時の江戸には、復興を支えるだけの大量の杉が身近なところにあったわけです。

そういう意味で、昔からアレルギー性鼻炎や花粉症にかかる人はいたのだろうという推測はできると思います。



(3)まずは体質改善をはかろう

東洋医学では、病気とは体質や体調が悪いために体に歪みが生じて、そこに外から悪いもの(邪気)が入ってきて引き起こされると考えます。

逆に言えば、体調が整っていれば、邪気は体に入ることはできず、またもし邪気に侵されたとしても、「自然治癒力」(生気)がはたらいて邪気を排除するので、症状は軽くて済むと東洋医学では考えます。

そのため花粉症でも、体質や体調の改善をして予防することが基本となります。東洋医学でいうところの「未病を治す」です。そのための工夫をいくつか挙げてみました。

1.食生活の改善


アレルギー反応が出やすい鼻や口の粘膜、目の粘膜は、胃や腸の粘膜にもつながっています。特に腸は、免疫細胞が多数存在し、アレルギーと直接関係するほかに「免疫力」に大きく影響を与えていることがわかっています。

善玉菌を増やし腸内環境(腸内フローラ)を整えることができれば、免疫力を高め、アレルギー症状を抑えることが可能です。そのために、ふだんから胃や腸に負担をかけない食生活を心がけ、発酵食品や食物繊維を積極的に摂るようにしましょう。



2.自律神経を整える


また、腸は自律神経の乱れの影響を特に大きく受けるため、自律神経の乱れると腸内環境が悪化します。また最近、「脳腸相関」といって、腸内の環境の悪化が脳に伝わって不安感や憂鬱な気分を引き起こし、それがさらに腸内の環境を悪化させることもわかってきました。


このように、いったん自律神経が乱れると身体と心の両面に悪影響が出るので、日ごろから自律神経を整える必要があるのです。


自律神経を整えるためには、規則正しい生活習慣を日ごろから心掛け、睡眠時間を十分にとる必要があります。また、ストレスに適切に対応する方法を自分なりに会得しておくことが大切です。ストレスが溜まったら深呼吸をする、ゆっくりお風呂に入る、気持ちをゆったりさせる音楽を聴く、など方法はいろいろあると思います。あるいは、日ごろから瞑想やヨガ、マインドフルネスなどを取り入れてみるのもよいと思います。



3.冷え対策をする


寒い冬に風邪をひきやすくなることは、だれしも経験的に知っています。理由の一つは、ウイルスが増殖しやすくなるからですが、もうひとつ大きいのは、冷えると免疫力が落ちるからです。

そこで、免疫力を増し花粉症の症状を和らげるためにも、防寒をしっかりして身体を冷やさないように気をつけることや、身体の代謝を高めるような食事をすること、週に2~3回はしっかりとした運動を取り入れるなどの工夫をしてみてください。


以上のような生活を送るように日ごろから心がけることで、花粉症になりづらい体質になることができます。もちろん、「疲れを溜めない」ことや「花粉を避ける」ことは、あらためて言うまでもないと思います。



(4)家庭で簡単ツボ療法

自宅で簡単にできるツボ療法です。


鼻、目の周り、前頭部にあるツボを刺激することで、鼻水・鼻づまりや目のかゆみなどの、花粉症の症状が一時的ですが改善します。症状が出た時にお使いください。また、体質改善に効果的なツボも上げてみました。こちらは、花粉症の症状がない時でもお使いいただけます。


 セルフケアとして1つからでもぜひお試しください。


●症状を改善する6つのツボ


1.迎香(げいこう)

場所:左右の小鼻の脇にあるくぼみ、押して響くところ。

効果:鼻炎や花粉症に効く。

手技:左右両方を中指で5秒ほどかけて円を描くようゆっくり押す。


2.印堂(いんどう)

場所:眉間のちょうど真ん中の部分。

効果:鼻のトラブルを改善し、鼻が通りやすくなる。

手技:中指で5秒ほどかけて円を描くようにゆっくり押す。


3.承泣(しょうきゅう)

場所:瞳孔の真下のややくぼんだところ。

効果:花粉症の目のかゆみや涙を緩和する。

手技:中指で5秒ほどかけて円を描くようにゆっくり押す。


4.合谷(ごうこく)

場所:手の背面の親指と人差し指の間。親指と人差し指の骨の合わさるところの少し上。

効果:顔面の症状全般に効く。また、自律神経を整える。

手技:親指と人さし指を広げ、反対の親指を人さし指の骨の下に入れるように強く押す。

5.太淵(たいえん)

場所:手首の横ジワと親指の外側のスジが交わるところのくぼみ。

効果:鼻水、鼻詰まりの改善。

手技:反対側の手首を握り5秒ほど親指で円を描くようにゆっくり押す。


6.上星(じょうせい)

場所:顔の正中線上で髪の生え際を上に2~3センチ上がったくぼみ。

効果:鼻水、鼻詰まりの改善。

手技:人さし指で5秒ほどかけて円を描くように少し強めに押す。



●体質を改善する4つのツボ


7.内関(ないかん)

場所:手首の内側の横ジワから指2本分上で2本のスジの間。

効果:精神を安定させ自律神経を整える。

手技:親指で5秒ほどかけて2本のスジを左右にゆするように押す。または温灸。


8.太衝(たいしょう)

場所:足の甲で第一指と第二指の間を押し上げ止まるところ。

効果:足の冷えをとり自律神経を整える。

手技:人差し指で5秒かけてやや強めに押す。または温灸。


9.足三里(あしさんり)

場所:下肢の太い骨の外側を下から上に押していき膝の下あたりで止まったところ。

効果:胃腸の調子を整えて全身の体力増強に効果がある。

手技:左右の手指全体をツボにかけ左右にゆするように刺激する。または温灸。


10.三陰交(さんいんこう)

場所:足の内くるぶしの上で指4本分あがったところ

効果:足のだるさをとり「腎」の働きを強める。生理痛などの女性特有の不調。

手技:足と同じ側の手の親指をツボにあて骨の下に入れるように圧迫する。または温灸。


どのツボも、数回押すことを目安にして、自分で加減してみてください。痛みがあとまで残るような押し方をしなければ、回数はあまり考えなくても結構です。



(5)おわりに

花粉症は、アトピー性皮膚炎やぜんそくなどと同じアレルギー疾患の一つです。

アレルギー疾患は、もともと人が備えている免疫機能が過剰に反応することで起こるものなので、「花粉症を完全に治す」というのは鍼灸でも西洋医学でも難しいことになります。

そのため、鍼灸やマッサージでの治療は、その時の症状をできるだけ取ることと、体質を改善するための施術が基本となります。


こう書くと、「なんだ、花粉症は鍼灸では治らないのか」と思われるかもしれません。

しかし、花粉症の鍼灸治療の効果については、上に書いた「自宅で簡単ツボ療法」を週に数回やっていただくだけで実感していただけると思います(特に、「症状を改善する6つのツボ」は即効性があるのでおすすめです)。

指で効果があるならば、鍼や灸を用いればもっと効果が上がることはおわかりいただけるのではないでしょうか?


そして、ここで知っておいてほしいのが、花粉症は症状さえあるていど押さえられれば、「なるべく病気のことを気にしない方が症状が悪化しづらい」傾向があるということです。


それは、花粉症を含むアレルギー疾患は、「心身症」(詳しくは過去のブログ記事があるのでそれを見てください)の側面を持つ病気だからです。心身症は、ストレスがかかったり、気持ちが憂鬱になればなるほど症状が悪化します。つまり、「花粉症だから○○できない」、「花粉症で○○つらい」と悩めば悩むほど、症状にとらわれればとらわれるほど、花粉症の症状がさらに悪化する可能性が高いというということを意味します。


まだ、2月に入ったばかりです。今から、ご自分で体質改善やセルフケアのツボを使って花粉症に備えましょう。そして、「今年はいつもよりすこし楽だな」と感じたら、花粉になるべく接しないようにして、むしろ生活を楽しんでいただければと思います。それが、花粉症を症状を軽減させることにもつながるからです。


さいごまでお読みいただき、ありがとうございました。



*1『鍼灸重宝記』

 『鍼灸重宝記』は、享保3(1718)年に本郷正豊により出版された鍼灸書。上巻で、基礎的な、陰陽五行、経絡経穴、東洋医学的な解剖・生理などがまとめられ、下巻で著者の治験例をもとにした具体的な病証論と治療法が記述される。「耳病」は下巻にある。


 

花粉症が気になる方はぜひ一度ご来院ください。


高崎さと鍼灸院は、鍼灸とカウンセリングを併用することで、体と心に寄り添う施術を行なっています。ただ施術するだけではなく、東洋医学の豊富な知見を活かし、即効性よりも、患者様の「自然治癒力」の回復にこだわった治療をご提案します。色んな治療をしたが改善しなかった方、あまり薬に頼りたくないとお考えの方は、高崎さと鍼灸院までお気軽にご相談ください。

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